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第1話 ママンのパンの味
2007年1月3日更新
 チュニジア人の夫と知りあったばかりの頃、1週間の日程で一緒にチュニジア旅行をした。初めてのチュニジアは、リゾート地のホテルで一週間。いきなり現地の家庭に滞在するのでは、文化的な差がありすぎてキツイだろうという彼の配慮だったのだろうと思う。でもそのときから私は、現地の家庭にこそ馴染みはじめていた様な気がする。 あれから3年ほどが経過したが、その時から今まで、ずっと変らずに私の一番のお気に入り、これより美味しいパンは食べたことがない!というママンのパンのお話をこのコーナーの第1話目に選んだ。
 ママンとはもちろん、夫の母親。彼女はチュニジア北部のハマメットという観光地から、10キロほど内陸に入った小さな村で暮らしている。彼女のお家の庭には納屋があって、その裏に、例のパンの釜戸がある。彼女がパンの生地をいつ捏ねているのか、私には未だにわからない。私が朝起きると、パンの生地はもう発酵を終えて丸く形成された状態で、私が見学できるのはいつも、釜戸に火をおこすところからなのだ。
 どこで集めてくるのか、小枝をたくさん抱えてきて、ママンが釜戸の準備をはじめる。
 小枝に火をつけて、灰になるまで放って置く。小枝たちが灰になる頃には、釜戸の温度がかなり上がっているので、そこに、丸いパン生地を手で伸ばして形を整えてから、釜戸の内側に貼り付けてゆくのだ。この工程を、私は何度もやらせてもらおうと試してみたのだが、熱くて熱くて、とても釜戸の中に手を入れられなかった。多分200℃以上はあると思う。だってパンが、10分そこらで焼き上がってしまうくらいだから。でもママンは、全然平気な様子でペタペタとパン生地を貼り付けてゆく。
 丁度3枚のパンが張り付くので、ママンは今は一人暮らしだけれども、いつでも3枚のパンを焼く。すぐに食べない分も、次の日くらいまでは食べられるから。
 でもこのパン、もちろん保存料など入っていないし、チュニジアの乾燥した気候のせいもあって、比較的すぐに味が落ちてしまう。焼き立てを食べるのは本当に頬っぺたが落ちてしまうくらい美味しいのだが、焼きたての味を知ってしまうと、次の日に温めなおさないで食べようとした時に、少しがっかりするかも知れない。
 パンが焼きあがるまで、オリーヴの木陰で一休みする彼女。それにしても彼女の服装、かなりチンプンカンプン、奇妙な格好をしていらっしゃるわ。まさか私がweb上で紹介してしまうとは思っていなかったので、かなりどうでもいい格好をしているのですね。でも彼女、ステキなお洋服もたくさん持っているのですよ。今度キチンと説明して、ステキなお洋服でパンを焼いてもらうことにしようかな?
 一度釜戸に貼り付けてしまったあとは、ひっくり返したりすることもなく、焼きあがるまで待つだけです。特にふっくらしたりすることはなく、そのままの形状で焼きあがったパンたち。
 原料は、スムール粉と水、塩、イースト、それだけです。焼き上がりはかなりあつあつなので、少し冷ましてから食べますが、ママンにとっても焼きたてのパンはやっぱり特別なようで、鼻歌まじりで嬉々として、食事の準備を始めます。パンの味を引き立てる、シンプルなものがオススメです。
 私は、オリーブオイルと塩を混ぜたものをちょこんと付けるだけで、もう本当に満足なのです。日本でいうと、炊き立てご飯に黒豆納豆だけで!というところでしようか?
 ママンのお気に入りは、パンを焼いたあとのまだ熱い釜戸に残っている炭を利用して緑の唐辛子を焼き、トマトも皮むきをするために少し焼き、皮をむいた唐辛子とトマト、にんにくを一緒にすり鉢ですり潰したものに、たっぷりのオリーヴオイルと少しの塩を加えて混ぜたサラダ、メシュイア(彼女はアリサとも呼んでいる)のようで、かなり辛いサラダなのですが、朝から美味しそうに食べています。私も、今ではこのサラダも大好物。
写真提供 マスミン
 このページの写真はすべて、友人マスミンの提供によるものです。彼女は2005年の夏に、チュニジアに遊びに来てくれたのでした。パンを食べることだけに夢中だった私とは違って、大変客観的な視点でママンのパン作りを写真撮影してくれていたので、彼女に了解を得、これらの写真をお借りしました。
 また、彼女のチュニジア旅行の様子は、彼女が管理しているwebサイト、「Bonjour paris」で見ることができます。
「Bonjour paris」トップページ
「Bonjour paris」チュニジア滞在記part1 へ 直接ジャンプ
「パリの階段小路から」も参考に!
 店長minaminaの個人サイト「パリの階段小路から」にも、チュニジア旅行の記録があります。今回のお話に関連のあるところに、下記リンクを貼っておきました。是非ご参照下さいませ。
パリの階段小路から 「チュニジアを食べよう!」
参考資料、メールマガジンのバックナンバー